第20期あきない塾 優良企業訪問

女性部あきない塾が年に一度実施してきた県外の「優良企業訪問」は、コロナ禍の影響を受けて延期されていましたが、今回2年越しに叶いました。

群馬同友会女性部のご協力を得て、東京から20名、2日間、2社を訪問をさせていただくことができました。

【開催日時】2022年11月11日(金)、12日(土)
【場所】株式会社山岸製作所、農業生産法人グリンリーフ株式会社(群馬同友会)


日本で一番大切にしたい会社

11月11日、1日目は「日本で一番大切にしたい会社賞」他、いくつもの素晴らしい賞を受賞されている「株式会社山岸製作所」でお話し伺い、工場見学をさせていただきました。

1997年から26年間、経済の影響、コロナの影響を受けながらも、その時々に新規に取り組まれたことが結実し、現在は元の路線に戻っているとのこと。経済の悪化に伴い、売上げが大きく減少した年も新卒採用は決してやめることはなかったなく、そして社員数が増えると共に、仕事も増やすことが出来てきているというので驚かされます。

現在は従業員120名、群馬県内に浜川工場、八幡工場、箕郷工場ヤマギシテキニカルセンターの3工場を持ち、ロボット、半導体の装置、風力発電や鉄道、踏切、防衛庁の発火装置、ロケット、飛行機の部品など製作されています。どこかに山岸製作所さんの部品が使われているので、知らず知らずお世話になっていることに。

人に恵まれないスタート

ニコニコと終始笑顔でお話し下さった山岸社長ですが、お父様が1962年に創業した会社に23才で入社した時は、人に恵まれないスタートだったといいます。

NC旋盤という機械を2台3台と少しづつ増やして仕事を作ってきたとのこと。

人手が足りない、社員が育たないため、事故で大手術したときですら、病院を抜け出して会社との往復をしながら事業に携わったといいます。

1986年の円高不況で倒産寸前の会社となった時も、弟さんと二人三脚で、何でもやり昼夜働いたこと、ご苦労はきっと私達の想像を超えるものがあったことだろうと感じました。

夢を共有

これまでの会社の発展に社長の奥様への約束が大きな信念となっていたという、心温まるお話がありました。

当時の金額で給料100万、3階建ての家、工業団地に進出するという、山岸社長の夢の実現を奥様に約束し、着々とその夢に向かって共に育まれてきたといいます。

夢を持ち、夢を語り、夢を共有する誰かのために働くことで、人は頑張れて成長できるのだろうと確信したお話しでした。

同友会との出会い

初めて夢の浜川工業団地に進出されるも、月商2000万、借金4億、借入金が月商倍率20倍のリスキーな経営状態だっとといいます。

社員の能力が低いと社員は辞めるし、育たないと感じ、1997年に同友会に入ってから、社員さんとの向き合い方に変化を得たといいます。

「経営指針の作成、社員教育、共同求人」

を決意し、社員を育て、新入社員を採用する活動を始めたといいます。

新卒第一号、第二号、第三号の社員さんの入社当時の特徴を話している時の社長さんは、とても嬉しそうでした。3人とも現在も会社で管理者となり働いてくれているそうです。

人を育てる

社員研修会には一緒に出、重要な仕事をどんどん任せ、客先に同行させ、この子達は一人前になるんだと信じ続けて支援し続けたといいます。

「社員10の基本行動」を作り、人を育てるため、組織を作るという取り組みをされたそうです。

リーダーを育てるために、キャリア・コンサルタント資格を取り、社員のコミュニケーション研修、カウンセリングを行ってきたことが、社員の退職の減少に繋がったそうです。

「教育は忍耐の継続」とのお言葉でした。

2009年、リーマンショックで80%売上げダウンした時も社員の雇用を守り工場を動かす、教育訓練を続けた時は、行政の能力開発のための補助金を活用されたといいます。

それが結果的に群馬県認定の職業訓練校、ヤマギシテクニカルセンターという教育システムの学校を開校することに繋がったとのこと。

そして、中堅社員の勉強の場、匠塾を作り、中堅社員の技術力アップを目指し、難易度の高い製品を立ち上げられる技術力を修得せることが出来たことが、新たな仕事を生み出し、売上げ向上に繋がることになったといいます。

会社訪問をして感じたこと

中小企業は優秀な社員獲得に苦労があるとよく聞きますが、「NASAから必要とされる技術者集団になる」をキャッチコピーに航空機に関わる事業をしていることで、社員の入社に役立っているといいます。

社員と夢を育て、夢を叶える、TVドラマ「下町ロケット」を地で行くような山岸製作所さんだと感じました。

山岸社長さんの会社運営は、全員参画経営と人材育成に重きを置き、大家族主義。

経営指針書を、10年ビジョンから長期事業計画まで、皆で作るそうです。

目標達成したかどうかの発表会や、コミュニケーションのための社内行事の開催など、社員さんの育成に注力されていることが印象的でした。

会社の成長は、社員と社員さんの共育ち。
共育は忍耐と継続、そして信頼すること。
組織はなかなか変わらない、組織を変えるには周りの協力が不可欠。


経営者のやることは社員さんのやる気にスイッチをいれてやる、そしてそのシステムを皆で作ること、ととても納得のいく説得力あるお言葉でした。

様々な取り組みの中に、仕事がなくなったときにやったというオンラインの工場見学のお話しがありました。

きることを考え、取り組み、それが次に繋がる、そして、常に次の展開を考えているというお話しも。「うちの会社で自慢できるものは、社員さん」と言い切る山岸社長です。

今、山岸社長の趣味はお料理、ご自身の「ビストロ山」で内定者をもてなすのが楽しみだそうです。

遊び心ある、嬉しい幸せサプライズですね。

これまでの失敗や苦難の時期を経ての社員教育の取組みに関するお話や、会社の成長に繋がるまでのご苦労のお話しは、業種や規模は全く違っても、私達が自社で取り組み、社員さんと向き合い、夢を語り、共有し、共育ちすることで成就するという、見習わせていただくことだらけの企業訪問となりました。

山岸社長、そしてご案内下さり、工場でご説明下さった社員の皆様、本当にありがとうございました。

群馬同友会との懇親

1日目の夜は、群馬同友会女性の参加者と、私達で宿泊旅館「松本楼」で懇親会をしました。


群馬同友会女性部は立ち上げて2年目とのこと、東京と群馬の女性部交流のこのイベントは、延期で待たされた分、織姫と彦星みたいにやった叶った恋みたいな感動すらありました。

群馬の同友会女性部との交流を作ることが出来たことは、東京同友会女性部の大きな一歩だと感じました。

これからも、同友会の活動の中で、長野の女性部との交流に続き、群馬の女性部とも交流できる分野が広がりそうです。
会員さんの経営する伊香保温泉の旅館「松本楼」は、お料理も美味しく、アメニティグッズも充実した、また行きたくなるとても素敵な旅館でした。

経営指針・評価制度・賃金制度を実行する会社

11月12日、2日目は、農業生産法人 グリンリーフ株式会社を訪問させていただきました。


前夜の懇親会に出席下さった澤浦社長さんが自ら、広い敷地内の農場、工場、企業内保育所、外国人社員の宿舎などをご案内くださいました。

グリンリーフ株式会社は、加工品を中心に製造販売を行う会社で、株式会社野菜くらぶが野菜のB to B販売、Bio Energy株式会社で太陽光発電を扱っているそうです。

最初の見学は託児所

最初に案内されたはグリンリーフの事務所前に建てられた社員さんのための託児所です。


6ヶ月〜3才までの社員のお子さんのみ預かる施設で、社員さんが安心して子育てと仕事ができる環境が整えられているため、出産後の離職もなく、キャリア育成ができる素晴らしい取り組みと感心しました。

保育士さんもグリンリーフの社員さんという徹底した社員愛ですね。

常に改善をしている工場

次に、収穫後の野菜の出荷のための工場を案内して下さいました。


システム化し、見える化することで、効率アップに繋げることが出来ている工程について説明くださいました。

東北の震災で、思いっきり赤字にする政策をとった時には、使っていなかったものを売却し、必要なものを購入するという大きな転換を図ったそうです。

また、上手くいかないことがあった時には、評価制度を取り入れることで改善できたとのお話しもありました。

壁に貼られた「困り事は宝物」という言葉は、改善の手掛かりを意味しているのですね。

評価制度と賃金制度、就業規則と社員教育が上手く組み合わされて実施しているところ、たとえばリフレッシュ休暇を取らないと評価が下がる規則など、ちょっと考えるとそこまでやるのかなと。

でもこの規則のおかげで、お互いが不在中の仕事を教え合うという、コミュニケーションを取るメリットもあるのだと説明があり、上手く作用するのだと教えられました。

社員教育については、会社の費用負担で、業務就業時間中ではない個人の時間に実施してもらう研修を促しているという興味深いお話しがありました。

その成果としての知識や技術、勤務態度など、5段階の数値で達成したと思う業績を評価するシステムを取り入れ、期待成果を達成するために重要な業務を5段階で評価したりしているとのことでした。

社員の育成に、きちんと向き合う社員教育制度、学ぶこと多し、と感じました

社内の見える化

澤浦社長の言葉の中に、何度も「見える化」ということが出てきました。

その1つに、「社内数字の見える化」がありました。「賞与資源の見える化」をしたことで、社員の数値に関する関心度が高まり、皆が数値を見るようになったとのことでした。

また、「作業数値の見える化」では、チームで情報をシェアすることに綱がったといいます。

そして社員さんから年に1回アンケートを取り社員の声を聞くことで、生産性の向上に繋がったお話しをしてくださったのですが、興味深い例の紹介がありました。

「現場は自分たちが作業を頑張るので、管理職は仕事を取って来て欲しい」と。

また、「一人一人の作業熟練度の見える化」では、自分の頑張りが最終的に給与アップになるということを皆が理解して自発的に動く社員を育てるのだと、

「経営指針と、評価制度と賃金制度を実行すると必ず成果が出る」

とおっしゃるのには、このような実践による裏付けがあっての信念なのだと教えていただきました。

そして、理念や思いを伝え、毎日社員にメッセージを送り、改善を日々行うなど、社員さんとのコミュニケーションを欠かさないという澤浦社長さんの経営者の姿勢、思いを社員さんに伝えることが大事なのだとあらためて教えていただきました。

人を大切にするということは、自ら挑戦できる環境を作ってあげることだともおっしゃった澤浦社長のお言葉も、大変印象的でした。

元々は、こんにゃく製造で創業した会社だそうですが、B to Bのビジネスを行う野菜くらぶの売上げが現在一番大きい部門だそうです。

商品は有機と無添加にこだわるという、明確な特色を追求されていて、「感動農業 人づくり 土づくり」という経営理念に表れていました。有機肥料を作る機械を設置し、土づくりから徹底していらっしゃいました。

パンフレットに「良い土」が「良い人」をつくり、感動を生む農業へとつながると書かれていました。

労働生産性が上がり、社員の給料が上がることが目標ですとも。

「簿記3級」が大切ですとおっしゃり、その理由として、数字で物事を考えることができるからと、なるほどと納得しました。

スタート時は黒の連続

澤浦社長さんのスタート時のご苦労話を質疑応答でお願いしてお話し下さいました。怒られるかもしれないですが、なんだかとても楽しく聞かせていただきました。


農家に生まれ、農家の立ち位置(社会の低い評価)に嘆き、驚き、金融機関の担当者から言われて悔しかった思いをバネに奮起してやってこられたのだと。


機械が買えない時に、やむなく手造りで丸いこんにゃくを作って、袋に入れて口を縛って出荷したら、「手造りこんにゃく」として売られたことで、それが消費者に支持され、750万、1,500万、3,000万と売上げアップにつながったこと。

生コンの攪拌機をこんにゃくの攪拌に使用していたら、機械が保証期間中に壊れることの連続で、そのため無償で交換してもらえたこと。

同じ店舗ではしょっちゅうできないので、電気店を変えて購入していたら、大型店舗の売り場で以前無償保証を対応してくれた方に会って冷や汗が出たお話など。

現在の会社の成功までの様々な工夫と智恵、努力の積み重ねなど、クスッと笑みが出る内容でしたが、本当に貴重なお話しの数々をうかがうことができました。

外国人雇用の活用

新しく増設中の外国人社員の宿舎を案内して下さったときは、とても嬉しそうにスマホの画面を見せて下さいました。

故郷の人たちと繋がっているFacdebookに、日本での仕事での自慢話をアップしている内容です。

澤浦社長さんは、FBを毎日チェックしているそうす。

実習生が口コミで希望して来てくださるそうですから、採用の大きなメリットですね。社員愛に溢れた澤浦社長さんのお人柄、本当に素敵でした。

そして、今日までの頑張りは、あの金融機関の嫌な担当者のおかげだと、笑いながらユーモア溢れるコメントがありました。

沢山の学びを得た、気持ちいい青空の下の工場見学でした。

私も働く主婦として、東京へ来て以来ずっとパルシステムのお世話になっているので、グリンリーフさんにはお世話になりっぱなしだったということになります。2日目も学び多き企業訪問でした。

もう一つの企業

帰りの駅への途中、この旅行で群馬県からいただいた11月12日使用期限のクーポン3,000円を使うため、原田農園に立ち寄りました。

私はリンゴのバムクーヘンをお土産に買いました。

宿泊させていただいた松本楼も、帰りのお買い物処の原田農園もみな群馬同友会の会員企業さんとのこと。

おもてなしにも、そしてこのイベントの準備に携わって下さったすべての方々に感謝が絶えません。

最後に

山岸製作所の山岸社長さんからも、グリンリーフの澤浦社長さんからも、社員さんの成長と幸せが、会社を発展させるのだと、あらためて教えていただいたとても有意義な優良企業訪問でした。


これからも群馬同友会女性部との連携が益々深まるだろうと期待に胸が膨らみます。

本当にありがとうございました。

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