愛ある経営の実践~予定外の留学から翻訳会社設立、そして福祉の舞台へ~【女性経営者全国交流会from新潟】

2020年11月16日(月)に女性経営者全国交流会(女全交)が新潟同友会の設営で開催されました。
オンライン開催となったため、残念ながら新潟に集まることは出来ませんでしたが、全国から700名を超える参加者を迎え大盛況となりました。
東京同友会からは、株式会社ワイズ・インフィニティ/株式会社ワイズ・インフィニティ・エイト 代表取締役 山下 奈々子氏が第一分科会の報告者として登壇しました。
第一分科会の講演の要旨と参加者の皆さんの感想をお伝えしたいと思います。

愛ある経営の実践
困っている人を助ける気持ちが仕事につながる〜共に生き、互いに必要とされる社会へ〜








(株)ワイズ・インフィニティ
(株)ワイズ・インフィニティ・エイト
代表取締役
多様な働き方推進委員会委員長
港支部副支部長
山下 奈々子氏

1.自己紹介~なぜ翻訳会社を立ち上げたのか

2000年にワイズ・インフィニティを設立。ニュースや映画、ドラマ、企業のPR用動画の吹き替えや字幕翻訳、翻訳スクール運営、聴覚障がい者向けの字幕制作が主な業務です。昨年からアメリカンコミックの出版事業も始めました。
高校生の頃の夢は「心理士みたいな仕事・・」と考えていましたが、高校卒業と同時にアメリカに留学することになります。本来、高校生1年生だった弟が行く予定の夏休みの短期留学が、尾崎豊の「15の夜」のような事件を起こし、私が代わりに行ったのが発端です。夏が終わり帰国すると大学受験のはずでしたが、出遅れたので自分で情報を探しアメリカの大学に進学します。
留学先はバージニア州の田舎の小さな大学です。ホームシックで恋人をつくったら子どもができ、21歳で出産。親からは勘当され貧乏生活をしていたところ、母が様子を見て父に懇願して23歳で帰国しました。
帰国後は英語を教えたりするうちにフリーの映像翻訳者になりました。タイトルにある「困った人を助ける気持ち」はあるので、「〇×語ができる人知らない?」とテレビ局のスタッフに聞かれると、「私が断ったら困るだろうな」と思い、なんとか探し出して紹介していました。そうするうちに仕事が増え会社をつくりました。

2.同友会との関わり

こういう経緯なので経営者の感覚はありませんでした。2003年に知人の紹介で神奈川同友会の1泊2日の経営指針成文化セミナーを受講し、当時作った経営理念は今も変わっていません。2005年に東京同友会に入会。2008年の障害者問題全国交流会でなぜか司会を依頼されたことがきっかけで、今は多様性委員会の委員長を務めています。その後、東京の成文化セミナーを受講、共同求人委員会や共育委員会にかかわり、支部長も拝命しました。

3.経営理念との出会い

経営理念を考えた時、まず浮かんだ言葉が「愛」でした。その当時、「愛」とか言っていたら経営は成り立たないと言われるような時代でした。

経営理念

私たちはここに集うすべての「知恵(ワイズ)」を駆使し、「無限大(インフィニティ)」の可能性を引き出し合い「愛ある経営」を実践し、消費者・取引先・社員・社会に貢献します

4.人を生かす経営

人を生かす経営とは、私の場合、愛ある経営の実践だと思っています。愛=関心を持つこと。マザーテレサの言葉で「愛の反対は無関心」というものがあり共感しました。
「NIJIU」というアイドルグループのプロデューサーの言葉も紹介します。「褒めるのも叱るのも、どっちも人についてしっかり知っていることが一番大切だと思います。しっかり知らないで評価をしたら、効果が全然ないです。だから始まりは人についての関心と愛だと思います。」
 人を生かす経営の実践には、まず社長の仕事をすることです。社長の仕事とは、(1)社員を幸せにすること、(2)明日のメシの種を探すこと、作り出すこと、(3)会社の未来を描くことです。
社長の仕事をするためにやめたのは、現場作業(翻訳・通訳)とトップ営業です。お客様に感動を届ける「パフォーマー」は社員です。社長はプロデューサーであり、社員が舞台で輝けるような仕掛けを作る舞台監督だと考えています。10年前、私が現場から離れ、営業もしないと宣言したら、社内は大パニックでした。しかし、特に大きな問題やクレームもなく、次第に携帯電話も鳴らなくなりました。時間ができたので、社長の仕事を考え始め、社内の様子もよく見えるようになりました。
社長の仕事(1)「社員の幸せの追求」は、会社で得ることができる社員の幸せとして、経営計画書に載せています。①安定した収入②成長の実感③誇りを持てる仕事(会社)④人・場所ともに充実した職場環境です。特定の会社に売り上げを依存しないことも大切です。人間性を高める「あり方勉強会」では20年間小山昇さんの『仕事ができる人の心得』をテキストに使っています。年2回、社員とのライフプラン面談も行っています。社員が誇りに思う会社にするため、カンボジアとセネガルに学校を設立したり、大手との直接取引など、意識しています。
社長の仕事(2)「明日の飯を作りだす仕事」では、「私たちは何屋さん?」「5年前と同じことをやっていないか?」「『翻訳村』に閉じこもっていないか?」と社員に問いかけています。その流れの中でアメコミ出版事業が始まりました。入社二年目の社員がアメコミの大ファンで、発案してくれました。
社長の仕事(3)「会社の未来を描くこと」は、社員に任せて見守っていたら、お客様や事業のことは社員の方がよくわかっている状態になりました。社長として大切にしたのは「当社のあり方」を伝え続けることです。一番難しいのは「継続」「ぶれないこと」「あり方と自身の言動を一致させること」です。研修で一冊の本を何度も繰り返し読んでいるので、幹部も若い子たちに同じ話をするようになりました。

5.2つ目の事業~なぜ異業種の福祉へ?

2014年に設立したワイズ・インフィニティ・エイトは障害を持つ子どもの放課後等デイサービス、グループホームを運営しています。放課後デイで掲げていることばが素敵なので紹介します。

「ここポッシブ星では自分をふくめてみんなが一人ひとりとっても大切な人です。一人ひとりみんな違うけど自分も人も大切にします」

なぜ福祉をはじめたのか。子どもの頃に澤田美喜さんの「エリザベスサンダースホーム」や、女優の宮城まり子さんが設立した「ねむの木学園」の話が心に残っていたからだと思います。転機は2012年に福祉事業が民間参入可能になったことです。本当に自分がやりたかったことは?と40年越しの思いが見えてきて、何かやってみようと始めました。

6.これから

翻訳会社は社員に承継する予定です。幹部社員には、他から社長を連れてくる、他社の傘下に入る、社員が承継する、という3つの選択肢を示して「どうする?」と聞き続けてきたら決意が固まったようです。
私は、自分にしかできないことはない、と考えています。辛いこと悔しいこともありましたが、基本的に忘れてしまいます。これまでもミッションを与えられてきたと思います。今年から福祉関係の大学の女子大生になりました。卒業したら新たな展開になると思います。次のミッションが楽しみです。

分科会参加者からのコメント

参加者アンケートのコメントをいくつかご紹介します。

「愛ある経営の実践」というテーマで、新しいことに挑戦し、翻訳村に閉じこもらずに無限の可能性を追求する姿勢に感銘を受けました。従来の方法や、従来の業態、業種にとらわれず、自分のミッションを追求しようと思いました。

ご自身の人生、会社経営、苦難がやってきても、正面に受け止めて乗り越える力に勇気を頂きました。優秀な会社と評価されてからの揺り戻しのお話では、とても共感できる部分がありました。部下には分担し権限委譲したつもりでも、部下当人には見てくれていないような、孤独感が生まれることも、改めてきづかされました。

経営者としてスタッフと共に育つ、という想いがどこかにありました。
山下さんのお話のかなに「仕事と作業は別のこと」という言葉があり、スタッフと共に育つ自分の考えと結びつく点があり、心に深く残りました。
さらに心に残った言葉として、「自走する」がありました。
それは経営の根っこにある女性の自律と繋がりました。
女性の働きと当社の存在は一緒に動くコトなので、仕事をし自律していくと女性とドンドンコミュニケーションを取っていくのかがわたしのこれからの実戦です。

山下さんの報告の中で、「出会った人すべてをファンにする」という思いにすごく共感しました。愛の反対は無関心。社員に対してもお客様に対しても経営の仲間に対しても、全ての根底に愛を持って関わりたいという思いを、改めて強く感じた報告でした。全国各地、事業も状況も様々な経営者がいますが、皆思いは一緒で、働く人を幸せにしたいという思いが、経営の根っこにあるということを実感しました。ありがとうございました。

愛の反対語は無関心。経営者はプロデューサーないし舞台監督、社員がパフォーマー。という言葉が刺さりました。また、仕事だからやるのではなく、人を助けたいとか、喜ばせたいからやるという姿勢が大切だとも気づがされました。このことを肝に銘じていきたいと思います。

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